編集後記

2006年8月号 連載 [編集後記]

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 ペテルブルク(現サンクトペテルブルク)の夏には遭遇したことがない。が、常にデジャヴュ(既視感)にとらわれる。そらんじた文章があるからだ。「7月の初め、方図もなく暑い時分の夕方ちかく、ひとりの青年が、借家人から又借りしているS横町の小部屋から通りへ出て、なんとなく思いきりわるそうにのろのろと、K橋のほうへ足を向けた」 滔々たるネヴァ河畔の雑踏を夢魔のように彷徨するのは、『罪と罰』のロジオン・ラスコーリニコフである。 ▼今年は7月15~17日、先進8カ国(G8)のサミット(首脳会議)がここで開かれた。9月に自民党総裁の任期が切れる小泉純一郎首相にとっては「最後の花道」。が、儀典化したサミットに私はさんざん付き合ったから、今さら感慨もない。私にとってペテルブルクは、あくまでも痙攣したような表情でほっつき歩く「ラスコーリニコフの都」である。自らをナポレオ ………

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