「長いトンネルを抜けると、その景色はいいものだ」　テレビカメラの放列と50人近い記者たちに向かって、孫正義は笑みを浮かべた。8月8日午後、ソフトバンクの第1四半期の決算発表は大幅な増収増益だったが、記者団は厳しかった。社長の孫に対して、手厳しい質問を浴びせかけた。買収で膨らんだ巨額な借り入れに耐えられるのか、携帯事業は今秋に解禁される番号ポータビリティ（MNP：番号を変えずに携帯会社を変更できる）の激戦を勝ち抜けるのか……と。四半期とはいえ当期純利益ベースでも黒字に転換して、孫としては自信を持って望んだ決算発表だったろう。　だが、日本企業としては過去最大の買収金額である1兆7500億円を投じた携帯事業は万年3位、基地局網の整備が遅れているために、その第3世代機種はつながらない地域が多い。買収資金の調達のために借り入れた1兆2800億円を加えると、連結ベースの ………