2006年9月号 連載 [手嶋龍一式INTELLIGENCE 第5回]
わがインテリジェンス小説『ウルトラ・ダラー』のエピローグで、主人公の英国秘密情報部員スティーブン・ブラッドレーが、美貌の内閣官房副長官高遠希恵に、東アジア情勢を問いただす場面がある。高遠副長官は明快に応じている。「イラク戦争でのアメリカの敗北、あえてそういいましょう、これによって、東アジアでのアメリカのプレゼンスは一層軽くなってしまいました。東アジアでのアメリカのあまりに永き不在は、台湾海峡をめぐる米中の軍事バランスを狂わせようとしています」 この物語の筆を擱(お)いたのは去年の夏のことだった。そのとき、ブッシュ政権は、中東の地ですでに苦境に陥っていた。だが、日米同盟の執行役のひとりに「アメリカの敗北」といわせるのは、物語とはいえあまりに大胆だという声があった。それから一年、そう指摘した当人からメールが届いた。「超大国アメリカの力をも ………
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