勇敢ゆえの「殉死」
2006年12月号 連載 [ひとつの人生]
アンナは調査報道ジャーナリストの「エタローン」(鑑)だった。誠実で勇敢、人の痛みに鋭敏なこの女性が、10月7日、モスクワの自宅アパートのエレベーターで、何者かに襲われ、凶弾に倒れた。ジャーナリストや人権活動家に対する政治的暗殺の一つだが、ロシアの言論の自由は取り返しのつかない代価を支払うことになった。 チェチェンの血まみれの戦闘の阿鼻叫喚を報道したジャーナリストとして、アンナは2000年に「ロシア金ペン賞」を受賞。数々の国際的な賞にも輝いている。しかし、それ以降も彼女は、取材と報道を続けてきた。プーチン大統領が新しい情報管理態勢を敷き、政府の検閲をジャーナリストの自主規制と合体させて、ロシアの新聞の第1面からチェチェンの悲劇の記事が消えてしまってからも。 アンナは他人と違っていた。生命の危険を冒して何度もチェチェンに行き、クレムリンの傀儡政権 ………
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