2007年3月号 BUSINESS [ビジネス・インサイド]
ホンダが海外資本から敵対的TOB(株式公開買い付け)の標的にされる、との観測が浮かんでは消えを繰り返している。
原油・地下資源の価格高騰で金融市場に巨額の資源マネーが有り余っている中で、ホンダにはトヨタ自動車や日産自動車のような安定大株主がいないうえ、時価総額も8兆円台であるため、子会社化はともかくとしても、「10%や20%の株式取得は決して不可能ではない」との見方は少なくない。
ホンダ側はこうした見方を一笑に付す。しかし、昨年秋、ロシアの新興財閥総帥でアルミ業界最大手ルスアルのオーナー、オレグ・デリパスカ氏が米ゼネラル・モーターズ(GM)株式を10%以上取得するのではないかと、ドイツのメディアが報じると、社内に緊張感がみなぎったのも事実。
GM株の取得話はデリパスカ氏が否定して騒ぎは収まった。ただし、経営再建中のGMと異なり、ホンダは世界的な勝ち組で企業としての魅力は明らかに上だ。しかも、円安が進めば米ドルやユーロに換算したホンダの株価は割安感が増す。得意の環境技術により原油高を逆手に取って販売を伸ばすホンダが、地下資源の高騰で膨張したマネーにのみ込まれれば、技術立国日本にとってはやるせない話だ。