2007年4月号 連載 [硯の海 当世「言の葉」考 第12回]
岩手県一関市で仕事をすませ、東北新幹線で盛岡へ向かった。「次は新花巻」という車内アナウンスを聞いて、そうだ、宮沢賢治だ、と衝動的に下車した。夕方の4時ごろ、駅前のタクシーに飛び乗って、宮沢賢治の関連の場所で、いまからどこが見られるか、と尋ねた。「んだね、記念館はたぶん間に合わないから生家と、花巻農学校ぐらいかね」。暖冬だというのに、前日から降り続く雪で、タクシーはのろのろとしか走らない。花巻市内の中心部にある生家は、蔵もそのままだが、裕福なたたずまいが賢治のイメージと合わないので、タクシーの窓からちらりと見て通り過ぎ、郊外の北上川を見下ろす丘の上にある花巻農学校(いまは花巻農業高校)へ向かった。校庭の隅に賢治が生活と農民啓蒙運動の拠点としていた「羅須(らす)地人協会」の2階建ての建物が復元されている。入り口の黒板に「下ノ畑ニ居リマス 賢治 ………
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