2007年4月号 BUSINESS [ビジネス・インサイド]
首都圏の私鉄やバスなど97社が3月18日、非接触ICを使ったプリペイド(前払い)式の電子交通乗車券「PASMO」(パスモ)を導入した。基本性能は、先行するJR東日本のSuica(スイカ)と同じFeliCa(フェリカ)のICを採用しているため、似通っている。最大のウリはパスモとスイカが相互利用できることで、どちらか1枚あれば首都圏ならどこへでも行ける点だろう。1年で500万枚を目標としているが、スイカが電子マネー対応カードだけで1500万枚を超えており、スイカで私鉄に乗る分を差し引くと目標に届くかどうか微妙だ。
最大の問題は大所帯だけに足並みが乱れがちなこと。たとえば電子マネー機能ではクレジットカードとオートチャージがリンクしていて、改札口を通過するさいに残金が少ないと自動的に入金し、クレジットカード決済してくれる。一見便利だが、地方私鉄やバス会社には導入コストを負担する資金がない。「そもそもスイカのシステムはケタ違いに高すぎる」との不満があり、静岡鉄道がコストの安い関西の「ピタパ」(後払い方式)を導入したいと言い出すなど一時は不協和音が聞こえた。
JRは東海が「トイカ」、西日本が「イコカ」でいずれもフェリカ系だが、中部圏では近鉄が「ピタパ」で、名鉄だけ旗色を鮮明にしていない。本誌が報道したように、フェリカは暗号が破られてセキュリティーに問題があるだけに、パスモの足並みの乱れはフェリカの全国制覇に影を投げかける。