2007年8月号 連載 [メディアの急所]
7月29日投開票の参議院選挙を前に、「選挙に強い」はずの朝日新聞が右往左往している。理由は、介護事業で不祥事を起こしたコムスンの親会社、人材派遣大手のグッドウィルとの蜜月にある。選挙当日、重要な開票所には記者が総出で張り付く。朝日はほぼ全開票所に人を張り付けるが、記者だけでは人手が足りないので、販売店に応援を頼んだり、学生アルバイトを雇ったりして、データ送付などの作業を依頼している。
ところが、販売店も人手不足のうえ、学生バイトも集まりにくくなったため、昨年、朝日の選挙本部は「アルバイト業務を、すべてグッドウィルからの派遣に切り替える『お達し』を出し、全国一律に使うように推奨した」(朝日現役記者)。全国一律なら料金が割引になるのは間違いないが、その一方で「選挙本部が営業攻勢にやられた」「いや、グッドウィルの広告攻勢に本社が負けた」との陰口も聞かれた。これまでアルバイトの採用は各地の総局長の判断に任され、現地で使い慣れた人材派遣会社もあったため、一部の総局からは「全国一律で使えというのはおかしい」との反発も上がったが、聞き入れられなかったという。
ところが、コムスン問題が深刻化するや、選挙本部は大慌てで「推奨」を取り消し、選挙本番を控えて一部の現場は混乱を来した。朝日社内では「評判のよくないグッドウィルに大事な選挙の仕事を任せようとしたのが、そもそも大間違い。折口雅博社長のよからぬ噂は東京の社会部記者の多くが知っていた」と、危機管理の甘さを批判する声が上がっている。