2007年11月号 連載 [メディアの急所]
日本経済新聞社が来春、個人投資家向けのタブロイド週刊紙を創刊する。ページ数は50~60ページ、中高年層や主婦など小金持ちをターゲットに投資情報を提供する。定価は一部500円で月2千円の予定。バブル崩壊以来、部数低迷で長らく赤字に悩んできた「日経金融新聞」(日経社内略称KS)の廃刊に代わる新媒体だ。
日経の常として、お手本は米国にある。米ダウ・ジョーンズ社が「ウォール・ストリート・ジャーナル」紙の姉妹紙として週末に発行している投資専門紙「バロンズ」だ。発行部数は公称50万部、金融関係者や投資家の必読紙とされ、自ら資産運用を行うことを旨とする米国人が、週末にコーヒー片手にこのバロンズを手にとって情報収集に努める、と言われる。「日経バロンズ」(媒体名未定)の目標は、米国の本家より控えめの10万部。月間広告収入3千万円を目論む。証券・金融取材に携わってきた編集記者、デスク、部長、さらには販売・広告局の有能なスタッフも投入。日経の総力を挙げてKS廃刊のリターンマッチを挑む。
編集長は編集局次長の野村裕知氏。証券部、産業部記者を経て米ニューヨーク特派員、「日経ビジネス」編集長、証券部長などを歴任している。企業の活動が東証などの旧来の業種分類を超えて広がる一方、個人投資家が日本でも本格的に増える中で、株価一覧を従来の業種別ではなく、「50音順」にするなど読者本位の新機軸や、「日経」本紙には掲載しづらい突っ込んだ読み物、そして、何より読者が期待するであろう「推奨銘柄」をどう品よく提供するか。関連会社の日経ホーム出版の月刊誌「日経マネー」との棲み分けも気になるところだ。