2007年12月号 連載 [メディアの急所]
2007年10月1日は新聞社のウェブサイトが激動期に入った日として歴史に残るだろう。
この日、朝日、日経、読売の3社長が記者会見して3社による共同サイト「ANY」構想を発表。これに対して、産経はマイクロソフト(MS)と手を組み「MSN産経ニュース」をスタートさせ、毎日は独自の総合情報サイト「毎日jp」を立ち上げた。
年明けにも始まる「ANY」サイトの売り物が3社の社説の比較程度にとどまっているのに比べ、産経の試みは先鋭だ。住田良能社長はあらゆる分野で紙よりもウェブを優先させる「ウェブ・パーフェクト」を掲げ、秋田の畠山鈴香被告の裁判の同時中継や小沢一郎民主党代表の会見全文、主要裁判の判決の全文掲載など、紙に見切りをつけたかのような戦略を、次々に打ち出している。
産経にはMSとの共同ニュースサイトのほかにも、83人の記者ブログや記事への感想を書き込める「イザ!」、エンターテインメント重視の「ZAKZAK」があり、サイト戦略では独走の観がある。 一方、MSとの提携を解消した毎日はヤフーに急接近し、営業などでも協力関係にある。課題はPV(ページビュー)をいかに増やしていくか。今年創刊135周年を迎えた毎日は写真のデータベースが豊富なことで知られる。昭和30年代の写真特集や、東京モーターショーのコンパニオン写真特集など、本紙ではできない企画に力を入れている。
あくまで紙媒体が主の「ANY」に対し、「ウェブ・パーフェクト」の産経と、12月から「J字」(ジャンボ文字)の採用で「紙も電子媒体も狙う」毎日。それぞれの路線が明確に分かれつつある。