編集後記

2007年12月号 連載 [編集後記]

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無人の野を歩んで、不安に耐えられる人はそう多くない。茫々と地の果てまで道もなく、案内もいない。響くのは自分の足音だけ。調査報道も似ている。6カ月前、山田洋行疑惑を初めて報じたときはそうだった。元専務や本社の写真すらない。リアリティーは文章の中だけだ。自ら掘り出すスキャンダルとは、がらんどうの無音室で声を発するようなものだった。▼でも、今は検察が“解禁”したから、どの新聞も思い切り書き飛ばしている。名誉毀損のリスクも、賠償訴訟のリスクもなし。人のあとからついていくのは楽なのだ。そのかわり、スクープの恍惚もないし、予見のときめきもない。時の権力者に徒手空拳で挑む恐怖もないし、他人の人生をぶち壊して覚える慙愧(ざんき)の念もない。▼あれほど意気揚々としていた標的が、見る影もなくやつれて被疑者になっていく。それを見て快哉を叫びたくはない。スクープは ………

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