2007年12月号 POLITICS [ポリティクス・インサイド]
渡辺喜美金融担当大臣と事務方である金融庁との間に隙間風が吹き始めた。サブプライムローン問題をめぐり、事務方は楽観論を大臣に進講していたが、実際には米欧の有力金融機関や野村証券などが相次いで巨額損失を計上、ウォール街ではトップ更迭劇に発展した。先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)でさえ、10月のワシントン会合で世界経済の減速懸念を認めざるをえず、金融庁は面目を失った。
財務省も金融庁のサブプライム対策を「銀行・証券に対するヒアリングの開始が遅いし、各国からの情報収集も不十分」(関係者)と批判している。これに対し、金融庁は慢性的な人手不足を嘆くばかりだ。
業を煮やした渡辺大臣は私的懇談会「金融市場戦略チーム」(座長=高尾義一・朝日ライフアセットマネジメント常務)を立ち上げ、金融界のブレーンの知恵を借りることにした。しかし事務方は、懇談会の答申が金融庁の所管範囲を超えることを恐れ、渋々協力しているのが実情だ。
また、金融庁が消費者保護行政の切り札とする金融商品取引法の施行直後に、北海道の外国為替証拠金取引業者が破産、個人投資家が泣き寝入りする事件が起きた。監督していた北海道財務局の対応を疑問視する声もあり、渡辺大臣の怒りは爆発寸前という。
一方、事務方トップの佐藤隆文長官は学者肌で生真面目な性格だけに、苦悩の色を隠せない。長官が7月の就任直後に打ち出した「ベターレギュレーション」が掛け声倒れなら、「渡辺大臣は幹部人事も含め金融庁改革に乗り出す」との見方も浮上している。
「大蔵省解体」の結果として誕生した金融監督庁(金融庁の前身)発足から、来年で10周年を迎えるが、渡辺大臣の指揮下で最大の試練に直面するかもしれない。