2008年1月号 連載 [メディアの急所]
毎日が12月10日付の夕刊から紙面の活字をひとまわり大きくした。「ジャンボ」の頭文字を取って「J字」。マイクロソフトとの関係を解消し、10月に総合情報サイト「毎日jp」を立ち上げたばかりの毎日だが、「紙媒体」重視に先祖返りしたようだ。高齢者対策もあり、新聞は時代を追って文字を大きくしてきた。毎日は1983年1月、90年12月、2001年5月に拡大し、今回は1行を11字から10字にした。文字面積が14%大きくなったことになる。日刊紙として「日本一大きな文字」が売り物だ。
当初は08年の実施を計画していたが、朝日、日経、読売が3社連合を組んだことで予定が大幅に早まった。3社の動きを見て毎日の専売店が浮き足立ったためだ。3社長の共同記者会見当日に合わせ10月1日付朝刊に「文字の拡大」の社告を打つことも検討されたが、結局、同月12日付になった。
J字の全面採用に先行して、11月から生活関連面でJ字を使用。友好関係にあるTBSの朝番組で司会のみのもんたに取り上げてもらったり、PR版やポスター、チラシ作戦も大々的に展開した。12月11日の朝には首都圏の主要駅頭で役員がPR号外を配った。
しかし、文字の拡大は「毎日の読者は高齢化している」と公言したようなもので、紙離れに歯止めがかかるか否かは未知数だ。
ウェブサイト戦争に軸足を移したかに見えた新聞業界だが、毎日の奇策を受けて文字拡大の検討を始めたところもある。新聞経営者の紙媒体への拘りは強く「大きな文字」に追随する動きが出そうだ。
一方、ウェブシフトで地域面を削減するなど紙面が手薄になった産経を狙って、朝毎読が販売攻勢をかけるとの見方もある。