“辺境”アイルランドと裸形のエゴ

演劇『ビューティ・クイーン・オブ・リナーン』

2008年2月号 連載 [IMAGE Review]

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荒涼とした“辺境”アイルランドの風土が生みだすのか。英国のアイルランド系劇作家、マーティン・マクドナーが描く世界は、人間は見捨てられた存在だという終末的な状況をまざまざと映しだす。このマクドナーの処女作を気鋭の若手演劇人、長塚圭史が演出した。人間のむきだしのエゴがぶつかり、傷つけ合わずにはおかない、みじめで不条理な運命を容赦なく浮き彫りにする。『ビューティ・クイーン・オブ・リナーン』は、1971年ロンドン生まれのマクドナーが23歳の時に書いた。両親の出身地であるアイルランド西部のリナーン地方を舞台にしている。病身の母マグ(白石加代子)と婚期を逸した娘のモーリーン(大竹しのぶ)は、世間から閉ざされたように暮らし、母は病気であることを口実に娘に家事と身の回りの世話をさせる。ある時、近所のドゥーリー家のレイが、英国で働いている兄のパトが一時帰国しパー ………

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