アメリカ政治に潜む黒々とした意匠

2008年4月号 連載 [手嶋龍一式INTELLIGENCE 第24回]

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うっすらと色づきはじめた欅(けやき)の木立の向こうにたつ煉瓦造りの建物から風に乗ってさんざめきが聞こえてきた。ガラス窓からは灯りが洩れ、カクテルを手にして談笑する人々が揺らめいている。その夜、ニューイングランドにある大学の研究所では、新たにフェローを迎えて、華やかな宴(うたげ)が催されていた。五つの大陸に散らばる15の国々からやって来た19人の同僚たち。彼らは、真っ白なテーブル・クロスにレノックスの皿と銀器が置かれた席に着いていた。私はこれから1年、ともに暮らす仲間たちを心躍るような気持ちで眺め渡した。1990年代の半ばのことだった。だが、にこやかに会話を交わす同僚たちのなかで、ふたりの眼差しだけが、ひときわ暗く、険しかった。その瞳は、鋭利な金属片を思わせる、鈍い光を放っていた。学際的な研究所として知られるCFIA・国際問題研究センターにその年招か ………

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