2008年5月号 連載 [硯の海 当世「言の葉」考 第25回]
3年ほど前のことだったが、講演のため前泊した高松のホテルの目の前がフェリー乗り場がある港だった。どこへ行く船だろうと見に行ったら、あと5分で小豆島行きが出るというので、衝動的に飛び乗った。講演の時間まで3時間、すぐに戻れば大丈夫と船上で計算して、映画『二十四の瞳』の分教場へ行ってみることにした。フェリーが着いたのは大きな土庄港で島の西端。分教場は東のはずれで、うまいぐあいに時間があうバスがない。往復すると2時間はかかるという話だったが、これを逃すと永久に行けないかもしれないと思って、思い切ってタクシーを貸しきることにした。左手にオリーブ畑、右手に海原が広がる道を、地形に合わせて車はくねくね走る。記憶に残る映画の景色と同じだな、と感慨にふけりながら、いまでも仁太やソンキ、松江にマスノと登場人物の名前を覚えていることにいささか驚いた。おそらく昭 ………
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