2008年6月号 連載 [LOCAL EYE]
5兆円の借金を抱え財政危機に陥っている大阪府の橋下徹知事は連日テレビに登場、今後9年間で6500億円規模の歳出削減を行う財政再建策(PT案)を府民に提示し、「我慢してほしい」と訴えている。
府から補助金をカットされる市町村長との意見交換会では、「弱いものいじめだ」との批判を得意の「演技」でかわした。声を震わせ、涙を流し「大阪を変えたいんです。ご協力をお願いします」と訴えたことで形勢が逆転。各市町村には「知事をいじめるな」との抗議が殺到した。
ある市長は「無茶苦茶です。厳しい歳出削減をしてこなかった府が、突然、そのツケを市町村に押し付けている。最近、府が禁じたカラーコピーを使っている市町村なんてないですよ。府から頼まれて始めた各学校のガードマンや、お年寄りを訪問するソーシャルワーカーまで切り捨てるなんて、梯子を外すのと同じ」と、不満をぶちまける。
その橋下改革で、ついに犠牲者が出た。府人権室の小谷俊秀室長が倒れ、集中治療室に運ばれたのだ。人権室は旧「同和対策室」で、部落解放同盟などとPT案をめぐって激しくやりあってきた。特に部落解放同盟の機関紙である解放新聞などを各部で何十部も購読していたのを、いきなり各部1部に減らしたことなどからひどい突き上げを喰らっていたようだ。さらに「人権相談推進事業」も、相談件数が少ないのに年間5600万円もの補助金を出しているとしてバッサリ切られた。ある職員は「小谷さんは交渉でかなり疲れていたようだ。それが心労につながって倒れたと思う」と話す。
橋下氏は全職員に月に3回ほどメールを送っている。その中で「皆さんがつらい場面に遭遇したときは、決して一人で抱え込まず、上司を通じて、どんどん報告して下さい。もし上司に言いにくいというのであれば、直接僕に言っていただいても構いません。皆さんを全面的にサポートしていきます」と書いている。ある職員は「聞こえはいいが、彼が責任をとるとは誰も思っていない。これから府民との板ばさみで苦しむのは我々ですから」と吐き捨てた。