「父子相克」に浮かぶ陪審の政治性

映画『12人の怒れる男』

2008年11月号 連載 [IMAGE Review]

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内戦で両親を惨殺されたチェチェン人少年を憐れと思い、ロシア軍の特殊部隊将校がモスクワに連れ帰って里親になったが、ある夜刺殺された。少年が逮捕され、凶器はチェチェンの特殊ナイフ、アリバイも曖昧で、近所の目撃者もいる。検察の立証は万全に見えた。陪審員12人は別室の体育館に閉じ込もって、全員一致の結論を出さなければならない。評決すると11人が有罪、残る1人が……。邦題からも分かるように、プロットの骨格は1957年のアメリカ映画の名作『12人の怒れる男』(シドニー・ルメット監督)を下敷きにしている。だが、単なるリメイクではない。ルメット版で日本人はguiltyやnot guiltyという英語を知ることができ、impossibleとnot probablyの違いを理解したが、今見ると赤狩りの嵐の後「アメリカの良心」とは何かを体現させた政治的な密室劇と映る。これに対し、ミハルコフ版は被告の少年のフ ………

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