2008年12月号 BUSINESS [ビジネス・インサイド]
またしてもコメ政策の矛盾が明らかになった。コメ余りを防ぐための制度がうまく機能せず、国が税金でコメを買わされるはめになったのだ。
矛盾が露呈したのは、豊作時にコメの値崩れを防ぐ「集荷円滑化対策」。国と農家が作った基金で余剰米を買い上げ、1年保管してせんべいの原料用などに売却する仕組みだ。ところが、今年は豊作で10万トンの余剰米が出る見通しなのにこの基金は使わず、10万トンは国が備蓄米として相場価格で買い上げる。多くの農家が「円滑化対策の買い入れ価格(一俵7千円)は安すぎる」と反発したためだ。
主食用米の相場は一俵1万2千円超で、確かに円滑化対策の買い上げ価格より5千円も高い。豊作なのに値崩れしないのは、生産調整(減反)と円滑化対策でコメ余りを最小限にとどめているからだが、減反や隔離要請を無視して豊作のコメを相場価格でどんどん売っている農家が少なくない。「価格維持に協力すると一俵7千円、協力しないと1万2千円というのはあまりに不公平」という声に押され、政府は備蓄の買い増しを名目に価格差を補填せざるを得なくなったわけだ。
減反政策の矛盾を取り繕うのに、血税を使うのはもはや限界に来ている。減反によるコメの価格維持政策を見直すしかないだろう。