「流動性」と大統領のジレンマ

2009年2月号 連載 [手嶋龍一式INTELLIGENCE 第34回]

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初冬のベルリンは烈風が吹きすさび、すっかり葉を落とした街路の並木が激しく揺れていた。「ブッシュのアメリカ」が、イラクのサダム・フセイン政権に鉄槌を振り下ろして8カ月。冷戦後もアメリカに寄り添ってきたドイツは、イラク戦争にきっぱりと異を唱え、米独関係は氷のように冷えこんでいた。「アメリカから来た」というだけで刺すような視線を感じてしまう。そんな空気が漂うレストランの一隅で、米財務省の対テロ資金担当官は、欧州中央銀行の政策当局者と相対していた。9.11テロ事件を機に国際テロ組織の闇資金をどう捕捉するかを協議した後の気が置けない会食のはずだった。その席で東ドイツ出身だという当局者は、北朝鮮高官が先日フランクフルトに立ち寄った折に漏らした発言を打ち明けた。「わが朝鮮民主主義人民共和国が偽ドルを刷っていると中傷する者がいる。笑わせてはいけない。偽ドル ………

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