製造業不況、足元みて「魔の商談」

2009年4月号 連載 [手嶋龍一式INTELLIGENCE 第36回]

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巨大なクレーンがとまったまま動かない。作業服に身を包んだ工員の姿は見えるのだが動く気配がない。静止した画面を見ているような光景だった。それほどに工場の操業率が落ち込んでいる。ハイテク列島ニッポンの屋台骨のひとつ、日本海沿いの工場群を歩いてみて愕然とした。福井、石川、富山、新潟と続くモノづくり地帯は、心肺機能が停まったように静まり返っていた。フクイの工作機械会社が存在しなければアメリカの戦闘機メーカーもエンジンを加工できない――。そう国防総省に言わせた会社のオーナーが、現下の苦境を語ってくれた。「オイルショックをはじめ幾多の不況をくぐり抜けてきた身だが、今度ばかりは恐怖すら覚えてしまう。循環型の不況ならじっと身を潜めていればいつか光が差してくる。だがこの不況は闇がどこまで深いのか予測もつかない。歌舞伎を見ているつもりが、ミュージカルに舞台が ………

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