2009年7月号 連載 [硯の海 当世「言の葉」考 第39回]
太宰治という作家の存在を知ったのは、小学校6年生のころではなかったかと思う。作品を読んで知ったというわけではなく、そのころ津軽の海辺の村に住んでいたので、いずれ入ることになるかもしれない青森高校の卒業生の有名な人、という程度の認識だったと思う。中学の後半から高校にかけては東京の三鷹から電車で15分ほど西へ行った町に住んでいた。三鷹は太宰が最後に住んだ場所で、いまも禅林寺に眠っている。*禅林寺の墓地で長い時間、太宰の墓の前に佇んだりしたのは高校生の頃だっただろうか。向かい側の「森林太郎(鴎外)墓」に腰をかけるような無礼を働いたかもしれない。太宰の生まれたのが梅雨時の6月で、玉川上水で山崎富栄と入水心中したのも同じ6月。季節と作品名にちなんだ「桜桃忌」にはたくさんの太宰ファンがこの寺に集まる。松本清張と並んで、ことしは「生誕百年」、風物詩という ………
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