ユニクロと蘇寧電器が銀座松屋を奪い合い

2010年1月号 BUSINESS [ビジネス・インサイド]

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リーマン・ショック以降の不況に追いつめられる百貨店業界で異変が起きている。東京・銀座に本店を構える松屋の大株主の座を「ユニクロ」と中国の家電量販大手が、水面下で争っているというのだ。10月27日、松屋の株価が暴騰し、ストップ高をつけた。

銀座の一等地に立つ本店の資産価値が2000億円とも囁かれる松屋は、常に投資ファンドの標的にされてきた。05年には「村上ファンド」に4%近くの株を買い占められ、現在はSFPバリュー・リアライゼーション・マスター・ファンド(SFP)という投資ファンドが、村上ファンドなどから株を買い集め10%弱の筆頭株主だ。

消費不況に喘ぐ百貨店は「氷河期のマンモス」にたとえられる。松屋も09年中間期(3~8月)は約4億5千万円の営業赤字に転落。今期の連結通期業績も、実に84年以来の営業赤字の見込み。当然、株価も冴えない。リーマン・ショック前は2000円台で推移していたのに09年10月中旬に600円台に落ち込み、株式時価総額も400億円を割り込んだ。そんな松屋株が10月末に900円近くに急騰し、高島屋による買収の噂が飛び交った。

「筆頭株主のSFPが売りに歩いていたようです。真っ先に興味を示したのが中国系家電量販大手の蘇寧(そねい)電器」(業界筋)。蘇寧といえば東京・秋葉原を本拠とする老舗家電量販店、ラオックスを買収し名を上げた会社。中国では1千店の店舗を持つという。

「蘇寧の目標は、日本でヨドバシカメラ級の店舗網を築くこと」(家電量販店関係者)。松屋を買収したら、ヨドバシのように家電中心のデパートを作る計画とみられる。そこへ割って入ったのが「ユニクロ」創業者の柳井正・ファーストリテイリング会長兼社長だったというから驚く。

関係者によると「松屋の身売り話を聞きつけた柳井さんは『中国資本に渡さない』と動き出した」という。もし、松屋を傘下に入れれば、銀座に旗艦店を持つことができるからだ。しかし「検討したが、条件が折り合わなかった。柳井さんはまったく諦めたわけではない」と、その関係者は言う。

筆頭株主のSFPを除くと安定株主がズラリと並ぶ松屋の浮動株はわずか4%。仮にSFPから10%弱を買い取っても、敵対的TOB(株式公開買い付け)を行うのは難しい。SFPだけでなく、東武グループ(7.6%)、伊勢丹(4.1%)、大成建設(3.5%)や金融機関の保有株を買い取らなければ3分の1以上を取得することができないのだ。とはいえ、25年ぶりに赤字になった松屋の前途は苦しい。創業一族の古屋勝彦会長と、その義弟である秋田正紀社長の同族経営はとうに限界。ユニクロや中国系資本が、いつ筆頭株主に躍り出るかわからない。

   

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