入り乱れる同姓の人たち
2010年2月号 連載 [日記逍遥 第13回]
日記から物語を紡ごうとするとき、人名索引の存在は何よりもの援軍となる。見逃しはないかと神経を研ぎ澄ます必要もないし、年月のはるか先にその名前を見つけて、物語に奥行をもたらすこともできる。逆に索引のない日記を前にしたときには、目の前に富士の樹海が横たわるような疲労感に襲われる。物語の素材満載の『矢部貞治日記』全4巻も、厖大な長さにもかかわらず索引がないため、パリで出会った横光利一との不思議な交流を追うのにさえ、何度も読み返さなければならなかった。索引が付いていたとしても、あまり役に立たないものもある。『古川ロッパ昭和日記』全4巻などその典型で、索引を一部の人物に限定しているため、「最後の総会屋」上森子鐵や、金子みすゞの実弟で劇団若草の創設者・上山雅輔など、興味深い人物が抜け落ちている。さすがに朝日新聞の名物記者鈴木文史朗は載っていたものの、 ………
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