J–CAST、地域判別特許で電通を味方に

2010年2月号 連載 [IT万華鏡]

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ニュースサイト「J─CAST」を運営するジェイ・キャスト(以下、J社)がついに電通を動かした。とはいっても本業であるニュースサイトとは直接関係がない。J社が隠れた資産として持っていた、“ある特許”に電通が目をつけたのだ。

J社が持つ特許とは、IPアドレスを基に都道府県を自動判別し、ウェブサイト上でコンテンツや広告を出し分ける技術に関するもの。電通とJ社は1月5日、共同出資(電通66・6%、J社33・3%)で地域ターゲティング事業の新会社「あどえりあ」を設立した。

地域ターゲティングの技術は利用者には気づかれにくいが、実は様々なサイトで利用されている。例えば、全日本空輸のサイトでは、アクセス地域ごとに最適な乗り換え案内、天気情報、キャンペーン内容などを表示。そのほか不動産業界でも広告出稿の際、地域ごとに最適な広告を表示するために利用されている。

J社の蜷川真夫社長が同特許を出願したのは98年。01年に「ウェブページ閲覧方法およびこの方法を用いた装置」として特許登録された。特許取得から長らく沈黙を続けていたJ社だが、08年夏頃からライセンス交渉を活発化。しかし、米国でJ社と同様の特許を持つ米デジタルエンボイの位置情報判別サービス「Digi-tal Element NetAcuity」の日本独占販売権を得た博報堂系のメディアレップ、デジタル・アドバタイジング・コンソーシアムがこれに反発。J社は後ろ盾を探していた。

広告業界内で逆らえる企業はないと言われる電通を味方につけたJ社。特許に関する実施許諾権はすべて新会社に独占的に提供し、今後のライセンス交渉は電通主導で進められる見通しだ。ただ、成長分野とはいえ地域ターゲティングの市場規模はそこまで大きくない。場合によってはライセンスの存在が市場拡大にブレーキをかける恐れもある。

   

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