奔馬のような侠気
2010年9月号 連載 [ひとつの人生]
若い日にいささかの接点があった。月1回、日曜日の午前11時に渋谷・道玄坂の喫茶店で開く『三田詩人』の編集会議に、男はたいてい遅れて現れて作品の原稿を差し出すと、そそくさと姿を消す。「人を食った奴」というのが大方の印象だったが、作者のいない作品の合評ではいつも最高点であった。江森国友や吉増剛造、岡田隆彦ら俊秀を生んだ詩誌の伝統につらなる大学紛争世代にあって、つかこうへいはほとんどただ一人でその衣鉢を継ぐ風情があった。〈鉄路を素足で歩く/朝もやの中/宙を舞うハイヒールに/しっかり身体をささえて/口笛は意識の街に/ゆっくり重降下する/始まりはエンタシスのマタドール/時計台のふぬけの旗振りに/ゼニをくれてやりはしたものの/ガラス一つ割れず/不気味に時を刻むあのジャイアンツ〉『視えないのだ 父さんには』と題した当時の作品には、九州筑豊に在日韓国人2世 ………
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