大阪市が「生活保護天国」の汚名返上に懸命

2010年10月号 連載 [LOCAL EYE]

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長年、大阪市の財政を圧迫してきた生活保護費問題。日雇い労働者やホームレスを多く抱える同市は20人に1人が生活保護受給者という「生活保護天国」だ。2009年度、生活保護費は2714億円(決算見込み)に上る。

NPO法人、不動産屋、介護事業所……。ありとあらゆる形で生活保護受給者を食い物にし、税金をむしりとる「貧困ビジネス」業者の排除に、捜査当局とタッグを組んだ行政が、ようやく本腰を入れ始めた。

大阪府警は5月、神戸市への転居を偽って、引っ越しに伴う生活保護費を詐取したとして、「NPOあしたばの会」を名乗る3人を詐欺容疑で逮捕した。8月下旬には、不動産業者「家のはしら」社長を逮捕。生活困窮者を自社の物件に入居させて、大阪市から住宅関連の生活保護費を騙し取っていた疑いがあるという。同社はホームレスに生活保護申請を指南し、自社の物件に住まわせ、さまざまな名目で生活保護費をピンハネする「囲い屋」の大手。社長は「これまで100人以上に生活保護を受けさせた」と、豪語していた。

大阪市も、生活保護申請者を13の救護施設や更生施設に一時的に入所させ、支給決定までの約2週間で住居探しを手伝う事業を開始し、申請に付き添ってきた「囲い屋」の排除に成功している。

大阪市の生活保護費の半分近くを占めるのは実は医療扶助費だ。生活保護受給者の診察や投薬の全額を負担している。ここに目をつけたのが介護事業所や医療機関。同市浪速区の介護事業所が経営する高齢者向け賃貸マンションに生活保護受給者を住まわせ、巡回診療などで過剰診療を行い、不正受給している疑いが浮上している。事業所からリベートを受け取った医療機関が形だけの診療で税金から多額の報酬を得る、生活保護への「寄生の構図」だ。

大阪市や府は立ち入り検査や監査で実態解明を進めるが、医療の専門性や高齢で証言ができないなど、不正解明は難しいとの声もある。大阪府警や大阪地検がバックアップ態勢をとっており、どこまで解明が進むか、注目される。

   

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