編集後記

2011年1月号 連載
by A

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参院で問責決議を受けてからすっかり鳴りを潜めてしまった仙谷由人官房長官。官邸で弊誌を舐めるように読んで、ひとこと吐き捨てたそうだ。「この悪口雑誌め!」。アハハ、これは光栄ですね。「仮免」総理をかついで身代わりの矢面に立ったものの、答弁や会見の場で白を黒と言いくるめる「口舌の徒」が丸見え。さんざん男を下げたのは、もっぱら「悪口メディア」のせいだというのか。

▼胃がんを切除する前と後に会ったことがある。痩せて頬がこけ面変わりしていたが、瀬戸際から生還して脂っ気が抜け、心もちサバサバしていた。だが、権力の座とは恐ろしい。昔の「俺が俺が」のエゴセントリズムに舞い戻り、国会内で不用意にマル秘文書を眺めているところをカメラに撮られて「盗撮」と噛みついた。なんでもプライバシーと騒ぐ“人権派弁護士”まるだしである。

▼「マル秘」と打った文書は限定した担当者に読ませる公文書なのに「私的メモ」と強弁する。おかげで何が起きたか。官房長官自身が範を垂れたから、霞が関は右へならえ。有識者会議などの配布資料まで「私的メモ」と称して回収し、保存と将来の公開が義務づけられた公文書から外していく。福田康夫元首相がせっかく実現させた公文書管理法が骨抜きにされているのだ。左翼出身の権力者が、手のひらを返して秘密主義と証拠隠滅に加担する典型である。

▼かたわら、ウィキリークスが暴露した米外交公電の翻訳抜粋に「ふーん」といった顔で読もうとすらしない。世界の政府はこの内部告発サイトを口では非難しながら舌なめずりして「アメリカの本音」を読み取ろうと懸命なのに、何たる鈍感力。マスコミ周辺に生息する左翼崩れを身辺に集め、裏で週刊誌を操るのが情報戦か。このソフィストに突きつけよう。「目は耳よりいっそう正確な証人」(ヘラクレイトス)と。

   

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