2011年3月号 連載 [眠れぬ夜のバラード ~うつ病時代の処方箋~]
都心から50キロぐらいのJRの駅で乗り降りしている。閑静な住宅街の玄関駅ではない。大きな工業地帯があり、そこの労働者がもっぱら使い、いろいろな外国人もいて、その人々向けの歓楽街で働く女性たちも利用する。私の家からも、夜にかけて排ガスを燃やす高い煙突がよく見え、夜中もなかなか明るい。アパートも多く、外国人の夫婦が喧嘩する声が聞こえたり、朝帰りの人通りも結構あり、深夜、暴走族が賑やかに行き交う。この地に、安い建売住宅を買ったとき、「危ない土地柄で心配ないのか」との問いをよく受けた。私はむしろ安全であると言ったものだ。確かに、ゴミ置き場の前の家にはよく黒塗りの高級車が止まっており、その家のリビングの奥の壁には日本刀が2本飾られている。そこの住人は一見してどういう生業かわかるし、駅前ではその筋の人の殺し合いもあった。ただ、私の家の周囲で、子供がさら ………
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