2011年5月号 連載 [IT万華鏡]
講義をオンラインで、しかも惜しげもなく無料で公開する大学が米国を中心に増えている。その草分けが、ユーチューブで講義を公開する「You Tube EDU」だ。ハーバード、デューク、UCLAなどの有名大学がこぞって参加している。「ハーバード白熱教室」のマイケル・サンデル氏など著名な教授の講義も無料で視聴できるとあって、学生のみならず社会人からのアクセスも多いという。スタンフォード、エール、MITなどが参加する「アカデミックアース」 という無料講義配信サイトも人気だ。
もちろんすべての講義は、アカデミーの世界では事実上の公用語である英語。「講義」という強力なコンテンツを武器に、大学側はブランディングの強化や優秀な学生を集める手段と位置づけている。狙いは、中国やインド、さらにはアフリカ諸国など人材の宝庫とされる国々からの留学生の獲得だ。人気の授業は、SNSやツイッターなどを通じて、あっという間に世界中に広がる。
無料のオンライン講義で“見込み学生”を惹きつけ、実際のカリキュラムや単位もオンラインで受講、取得できる大学も増えている。日本からの“入学”も可能だから、社会人にとっても魅力的だろう。
一方、日本の大学のオンライン展開はお寒い限り。ユーチューブなどを活用し、講義の無料公開に踏み切った大学は、京都大学などごく一部にとどまっている。「現場はその気でも、なかなか上の決定が下りない」(都内私大関係者)
少子化で学生数が減少するなか、国内外にその魅力をアピールしなければ大学は生き残れない時代がそこまで来ている。導入コストも少なくて済む動画配信は積極的に推進すべきマーケティング手法だろう。