「草食系」ミクシィが抱える内憂外患

2011年10月号 連載 [IT万華鏡]

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SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の「mixi」を運営するミクシィは8月31日、新機能「mixiページ」の提供を開始した。これは企業や団体がmixi上に自由にページを作成できるというもの。これまで企業がmixiでプロモーションを展開するには使用料を支払わなければならなかったが、新機能によってその方針は大幅に変更された。

ミクシィが方針転換に踏み切ったのは、あきらかにフェイスブックの侵攻を恐れたため。ミクシィの今年7月時点での登録ユーザー数は2471万人で、1カ月に1回以上ログインしたユーザー数は1535万人。フェイスブックの国内ユーザー数は明らかにされていないが、アクティブユーザーは400万~500万人前後とみられる。

フェイスブックは東日本大震災後から会員数を伸ばしているものの、ミクシィとはまだ大差がある。それでもミクシィがフェイスブック対策に躍起になるのは、企業の“ミクシィ離れ”が進んでいるからだ。今回のmixiページ機能は、フェイスブックが提供する「Facebookページ」の模倣といっても過言ではない。現在、多くの企業がこの機能を軸にソーシャルメディアマーケティングを手掛けており、これに対する危機感が特に大きかったとみられる。

国内で比較されることの多いグリーやディー・エヌ・エーは完全にゲームに注力した課金モデルに転換。高収益を上げ続け、国内で稼いだ豊富な資金を背景に海外展開を加速させている。一方、両社とは一線を画してきたミクシィだが、相変わらず広告依存モデルから抜け出せないでいる。企業がミクシィを離れ、本格的にフェイスブックに舵を切れば、収益源の多くを奪われかねない。危機感を覚えるのも当然だろう。

だが、今回のmixiページ公開は準備不足感が否めない。まず、企業のmixiページが開設されても、ファンが作ったページなのかオフィシャル・ページなのかが分からない。そのため、ミクシィ側に公認してもらう必要があるのだが、サービス開始時点ではその申請窓口はなく、あくまで担当者レベルのやり取りで対応している状態だ。さらに、mixiページで稼働する企業向けアプリケーションの開発についても窓口が整備されておらず、ごく一部の企業や問い合わせがあった企業に対してのみ開発仕様を渡しているという。これから体制を整えるにしろ、これでは見切り発車と言われても仕方ないだろう。

加えてミクシィが頭を抱える悩みの種がもう一つある。8月10日、1万7千人を超える署名が代表者によってミクシィ本社に届けられた。6月に発表した機能変更に反対した会員たちが抑えられない怒りを直接ぶつけてきたのだ。問題となっているのは、ユーザー同士が互いのページに訪問した際に履歴が残る「足あと」機能。リアルタイムに誰が訪問してきたのかを示すこの機能は、初期のmixiから搭載されている象徴的な存在で、ミクシィの成長を支えてきた機能とも言える。

ただ、ミクシィにとってはコミュニティー色を排除し、ソーシャル・ネットワークへと脱皮を図る戦略の中で徐々に邪魔な存在になっていたようだ。あくまでも知人や友人とつながってほしいミクシィ側の思惑とは異なり、足あと機能で知らない人同士が連絡を取り合い、つながってしまう可能性があるからだ。ミクシィの笠原健治社長はコメントを発表し、提供しようとしていた代替機能を一部改変することで反発する会員に理解を求めているが、今なお事態収拾のめどは立っていない。

フェイスブックもまた、幾度となく利用規約の変更や追加した広告機能に対して会員から反発を受けてきた。ゆえに、この問題はミクシィ固有のものというわけではない。それでも、世界規模で拡大し続けるフェイスブックを迎え撃つには、今のミクシィには不安要素が多い。

   

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