2011年11月号 BUSINESS [ビジネス・インサイド]
東京証券取引所と大阪証券取引所の統合交渉は最終局面を迎えたが、新設する持ち株会社「日本取引所」のポストをめぐり、両社が鋭く対立している。一部では「破談」観測も出ており、金融庁も苦渋の面持ちで交渉の行方を見つめる。万一、世間を騒がせるだけ騒がせておいて白紙撤回という事態になれば、日本の証券市場のリーダーと目される両トップの責任問題に発展するのは必至だ。
両社の統合構想は、今年3月10日付の日本経済新聞によるスクープで発覚した。その翌日に東日本大震災が発生し、当初は3カ月程度で合意に達するとみられていた交渉スケジュールは大幅に遅れ、今なお合意に至っていない。
非上場会社である東証と上場企業の大証では企業価値の比較が難しいため、当初から統合比率がネックになると予想されていた。ところが関係者によると、実は最大の対立点は「日本取引所のポスト」なのだという。
まず、大証の米田道生社長が「社長兼COO(最高執行責任者)」を要求した。これに対し、東証の斉藤惇社長は自らが「社長兼CEO(最高経営責任者)」に就いたうえで、米田氏を「副社長兼COO」で処遇する案を提示。このため、大証側が猛反発して交渉は暗礁に乗り上げている模様だ。
グローバル市場での地盤沈下に歯止めをかけ、「日本の証券市場復活!」を国内外にアピールするはずの東証・大証の統合構想が、醜いポスト争奪戦の末に破談になる危機に瀕しているわけだ。両トップにしてみれば、日本市場の国際化や市場参加者の利便性向上、システム経費の大幅削減といった大義より、自らの面子や勝ち負けのほうがよほど大事ということか。
破談になれば、「国家的プロジェクト」と位置づけて統合を後押ししていた金融庁の面目も丸潰れになる。剛腕で鳴らす畑中龍太郎長官が斉藤、米田両社長を辞任に追い込み、半ば強制的に東証と大証を統合させるというシナリオが現実味を帯びてきそうだ。