2011年12月号 連載 [眠れぬ夜のバラード ~うつ病時代の処方箋~]
裁判で精神鑑定を依頼されることが増えている。犯罪が尋常でない精神の持ち主によって引き起こされる傾向が増したというわけではない。精神の正常と異常の区別が難しくなってきたせいではないか、と感じる。奇人変人であることを売りにしてメディアのなかで成功を収めている人々もいる。天才たちのさまざまな奇行も紹介されることが珍しくない。こういった傾向は憂えるべきではなく、さまざまな個性の持ち主が生きられる多様な環境が用意されていて、それを支える経済的な裏づけが社会にあることを示している。この意味で日本社会はなお豊かである。ただ、何事にも歓迎できない側面というものがある。たとえば、変わった考えの人が権力や地位を得ると、相当厄介なことになる。ある事件の担当検事から、こんな依頼があった。内容は被疑者の精神状態の鑑定ではなく、精神科医の作成した鑑定書の吟味であっ ………
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