2012年5月号 連載
4月号の「ノー天気な藤村長官の『サイバーテロ対策』」は、情報セキュリティー対策の重要性が増すなかでひときわ興味深い記事だった。警察庁、経産、総務、防衛省などが縄張り争いに明け暮れ、統一した対策が講じられていないという。
サイバー・セキュリティーのような複雑な問題になると、独裁国家を含め、ほとんどの国々も関係機関の対立や足並みの乱れは避けられなくなっており、日本で起きていることも珍しいケースではない。
しかし、軍が「C2」(Command and Control)と呼ぶ、最高幹部の指揮統制がとれているかどうかとなると、日本はかなり深刻だ。1931年から第二次大戦終結にかけても同じ問題が起きていた。日本の陸・海軍、外務省の協調体制は参戦国で最低レベルだった。東電福島第一原発事故も誰が責任者なのかはっきりしなかった。政府が必要に際し全省庁や関係機関を統括できる手順や機関の設置は今も重要な課題の一つだ。示唆に富むFACTAの記事だった。
テンプル大学ジャパン現代アジア研究所長 ロバート・デュジャリック