「ローソン資産」の最大化に全力投球!

玉塚 元一 氏
ローソン副社長執行役員COO

2012年6月号 BUSINESS [インタビュー]
インタビュアー・和田紀央

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玉塚 元一

玉塚 元一(たまつか げんいち)

ローソン副社長執行役員COO

1962年生まれ。慶大法卒。米国留学でMBA取得。旭硝子、日本IBMを経て、39歳の若さでファーストリテイリング社長に。事業再生会社の創業社長を経て、ローソンへ。昨年3月より現職。

――玉塚さんが「全国1万店総合店長」に扮したコミカルなテレビCMが話題を呼びました。

玉塚 「ローソンにはマチ一番の晩ごはんのおかず、デザートがあります」と、加盟店の皆さんと一緒に、声を大にして売り込みたかったのです。「あんこや生どら焼き」とか、製造が追いつかないほどでした(笑)。

――国内コンビニ事業を任された直後に大震災が起きました。

玉塚 コストのことは考えず、あらゆる手段を使って物資の供給を最優先しました。「お客さまの欲しいモノが、欲しい時に、欲しいところにある」。その実現こそが、ライフラインとしての我々の役割と信じています。被災地支援の守りを固めつつ、それ以外の地域で攻めの経営を展開し、お陰様で前期も9期連続の連結最高益となりました。

――事業再生会社のリヴァンプから、畑違いのローソンに転じたのは、なぜですか。

玉塚 私が39歳でユニクロ社長になった2002年に、三つ年上の新浪(剛史)さんもローソン社長になった。マスコミで「若手の抜擢」と話題になり、様々な場面でお目にかかり、互いの社長業についても意見を交換するようになりました。もともと起業の夢を抱いていたので転身は考えもしなかったのですが、新浪さんから「小商圏型製造小売業として世界№1」を目指すというビジョンを伺い、それを本気で実現しようというローソン経営チームに入って力を発揮してみたくなったのです。

――ご自身の役割は?

玉塚 経営陣や現場のリーダーたちと話をしていく中で、外からは見えなかった大きな潜在力に気づきました。いちばん衝撃的だったのは会員数4千万のPontaカードを使ったお客さまのニーズの「見える化」の仕組み。同業他社では顧客分析にPOSデータを使っていますが、店員による顧客年齢の入力等には精度に問題があります。ローソンでは、予め顧客データが登録されているPontaカードの購買データの分析に切り替えました。さらに、1万1千の店舗網、IT水準の高さ、次世代リーダーの質などローソンの力は想像を超えるものでしたが、その一方で、生かし切れていない資産にも気づきました。

私の役割は、新浪さんが全てを担ってきた戦略の執行を二人三脚で行い、ローソン資産を最大限に活用することです。執行力を向上させるために私が肝に銘じていることは、現場の力、理念の浸透、前さばきの重視、そして自立した社員の増加です。

――若くして培った経営経験をどのように生かしますか。

玉塚 ユニクロ創業者の柳井(正)さんからは「計画が全て!」「明確なゴール!」「正しく、強い企業とはどのようなものか」など、一から叩き込まれました。製造小売業の商売感が身に付いたのは、そのお蔭です。リヴァンプではヒト、モノ、カネのないない尽くしの中で知恵を絞り、「人間力」で新事業を生み出すノウハウを学びました。

新浪さんは多面性を持った戦略家です。卓越した仮説により難関を突破する天才魔術師のよう。学ぶことばかりです(笑)。

   

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