世界で初めて全ゲノム解析による治療に踏み切って成功した。ピューリッツア賞記者が本誌に特別寄稿。
2013年1月号 BUSINESS [パーソナルゲノム革命]
2009年夏、シカゴの西方にあるミルウォーキーのウィスコンシン小児病院医療スタッフは、当時4歳だった男児患者、ニコラス(ニック)・ヴォルカーから小さじ一杯の血液を採取した。この瞬間こそ、ゲノム医療の歴史の転換点だったと、後世の研究者は振り返るだろう。ヒトは約2万1千個のゲノム(遺伝子)情報を持つが、ニックのそれを解析するため、全DNAの塩基配列決定(シークエンス)の着手に踏み切ったのだ。ニックは通常の食事をした後で腸に複数の穴が開き、その穴が腹部の皮膚を貫通して便が表に浸出する奇病で生存が危ぶまれていた。この全ゲノム解析で変異が特定され、ニックはピンポイントの治療が成功した世界初の例となった。私を含む地方紙「ミルウォーキー・ジャーナル・センチネル」の取材班は10年12月にこの“奇跡”を報じ、11年のピューリッツア賞を受賞した。ターニングポイントから3年後 ………
オンラインサービスをご利用いただくには会員認証が必要です。
IDとパスワードをご入力のうえ、ログインしてください。
FACTA onlineは購読者限定のオンライン会員サービス(無料)です。年間定期購読をご契約の方は「最新号含む過去12号分の記事全文」を閲覧いただけます。オンライン会員登録がお済みでない方はこちらからお手続きください(※オンライン会員サービスの詳細はこちらをご覧ください)。