2013年2月号 BUSINESS
権力移行期のどさくさに紛れ、日本郵政があざといトップ人事を強行した。民主党政権誕生の棚ぼたで同社社長に天下った元大蔵事務次官の齋藤次郎氏は昨年12月20日、同じく旧大蔵省OBの坂篤郎副社長にその座を禅譲した。「シマ」を守らんとする旧態依然たる官僚的発想にはただ呆れるばかりだ。
案の定、日本郵政グループの旧態依然ぶりはそれだけではない。日本郵便による大規模情報システムの調達においても悪しき談合体質を引きずっている疑いが濃厚なのだ。本誌は告発文書を入手するなどして昨年5月号で日本郵便による不透明な随意契約の乱発を報じた。そこに新たな情報がもたらされた。
「以下の案件はCTCが落札します」
告発メールが送られてきたのは昨年12月6日のことだ。一文に続いてインターネットのURLが添えられており、それは日本郵便が11月13日付で公告した入札情報にリンクしていた。タイトルは「郵便内務事務用PCにおける新ユーザ認証システムの構築」。入札は価格だけでなく技術提案なども加味する総合評価方式で行われる。応募締め切りは今年1月9日、入札実施は同30日が予定されている。
落札が予告された「CTC」とは伊藤忠テクノソリューションズを指す。実は同社こそが前回記事で指摘した不透明な随意契約乱発の主役企業だ。
日本郵便は5年前から「次世代郵便情報システム」を構築中。
新システムは共通基盤の上に各種アプリケーションを積み上げていく方式を採用、来年度からの順次稼働を目指す。
共通基盤に関し初期構築など最初の入札が行われたのは2008年夏。3件合わせた契約額は16億円余りに過ぎなかった。CTCも落札企業の1社だ。ところが、同年暮れから不可解な事態が続いた。「追加構築」などの名目で、入札を経ない随意契約が次々と結ばれ始めたのだ。前回記事の3月上旬契約分までで、CTCとの随意契約は9件、総額で約83億円に上った。
疑惑の中心にいるのは日本郵便の執行役員で情報システム本部を担当する大角和輝氏だ。日本オラクル出身で01年に旧日本郵政公社入りした。社内はおろか出入り業者にも、いまやその権力は絶大とされる。告発者によると、次世代システムを巡っては仕様書や総合評価に恣意性が入り込んでおり入札は形骸化、随意契約乱発による特定業者優遇のレールがあらかじめ敷かれているのだという。
前回記事を受け、日本郵便は社内調査を開始、現在に至るも継続中だ。が、告発者によると、技術に疎い社員が行っているため、調査は事実上頓挫。その言を裏打ちするように事態はむしろエスカレートの一途だ。CTCとの随意契約は少なくともさらに7件結ばれ、総額は実に450億円にも上る。開発は昨年秋からアプリ構築に入っている。こちらについて、告発者は日本アイ・ビー・エムを「利権企業」に名指しする。予告通りCTC同様の随意契約が昨年8月から始まっており、第1弾は20億円。こちらも将来、数百億円規模に膨れ上がるという。
落札予告に対し日本郵便は「関係者に事情聴取を行う。談合が確認されれば入札は停止。されなければ誓約書の自主的な提出を求める」と回答。1月30日の入札が見ものである。