会計士協会の次期会長候補に「不適正意見」

2013年3月号 BUSINESS

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7月に任期満了となる日本公認会計士協会の山崎彰三会長の後任選びが難航している。オリンパスの粉飾決算事件の影響で本命候補に「不適正意見」を表明する会計士が続出しているためだ。新日本監査法人とあずさ監査法人、監査法人トーマツの3大法人が持ち回りで会長を務める「慣例」が問われている。同協会は会計士2万5千人を含む3万2千人の会員、準会員を有する自主規制組織。今年は会長選挙を含む役員選挙の年だ。協会関係者によると、山崎会長の後任は池上玄副会長が本命だった。山崎氏の出身母体はトーマツで、前任はあずさ出身の増田宏一氏。慣例に従えば次は新日本出身の池上氏となる。

ところが、金融庁はオリンパスの粉飾決算を見逃した監査上の責任を認定し、昨年夏にあずさ監査法人と新日本監査法人に業務改善命令を出した。会計士協会は監査の責任者である担当会計士の処分を検討中だ。このため、処分を受けた新日本とあずさの出身者が会長職に就くことに対し、「監査への信頼が揺らぎかねない」と異論が噴出。協会は会則で「会員の指導、連絡及び監督に関する事務を行う」と定めており、「処分を受けた監査法人出身者の会長のもとで会員の指導、監督ができるものか」と憤る会員も。こうした批判を敏感に察知したか、「池上氏は(会長選出馬を)辞退した」とされる。会長の任期は3年で、山崎会長の再選は制度上、認められない。このため池上氏に代わる候補として、あずさ出身の森公高副会長が急浮上。ある関係者は「よりによってあずさ出身とは。憤慨して金融庁に『指導』を求める会計士も出る始末です」と打ち明ける。

大手法人が歴代会長を務めてきたのは、所属会計士が多く、大きな影響力を持っているためだが、監査報酬の伸び悩みで台所事情は厳しい。各法人とも50歳代の会計士の早期退職を奨励し、採用を絞り込んだため公認会計士試験合格者の就職浪人問題も深刻化した。一昨年は、就職浪人の解消を図る目的の公認会計士法の改正への対応に不満を持った多数の会員会計士が、山崎会長の解任を求める異例の請求を行い、大手法人のパワーダウンが浮き彫りになった。

さらに、かねてくすぶっていた会長の選出方法への不満が爆発した。現在の選出方法は、まず協会本部の役員選挙を全国の選挙区で行い65人の本部役員を選出する。ほとんどの選挙区は「無風地帯」で、実際の選挙は行われないが、東京や大阪では立候補者が役員定数を上回るため選挙が行われるのが通例だ。この役員選挙で選出された役員の中から会長候補が立候補し、協会内に設置される「推薦委員会」で選任される。この方式では、会員が直接選挙に関わることができず、推薦委員会での議論は非公開のため「密室で選出される会長」と批判を浴びている。とはいえ、全国ベースの直接選挙は費用がかさむ。中小法人や個人事務所には選挙費用を負担する余裕がない。仮に直接選挙に変更しても中小、個人から会長が選ばれるチャンスはゼロに等しいわけだ。このまま森副会長が新会長に選ばれたら協会内で騒動が起きそうだ。中小監査法人出身の澤田眞史元副会長や、国際通で知られる木下俊男専務理事を会長候補に推す動きもあるが、候補者一本化は容易でなさそうだ。

   

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