編集後記

2013年3月号 連載
by 宮

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2月12日の衆院予算委。民主党の辻元清美議員の質疑は見応えがあった。東電が昨年2月、国会事故調に「今は真っ暗」と虚偽の説明を行い、福島第一原発1号機への現地調査を妨げた真相に迫った。東電の廣瀬直己社長は、事故調の窓口を務めた企画部の玉井俊光担当部長が「全く上司に相談せず、本人の思い込みで間違った説明をした」と、全責任を部下に押し付ける答弁を行った。

玉井氏は1989年入社。大学で電気を専攻し、社内では「計装」(原発プラント制御)の専門家として柏崎刈羽原発の技術総括部長などを務め、事故発生後に企画部に転じ、事故調窓口となった。監督官庁(経産省)対応が本務の企画部は、文系キャリアの精鋭が集まる企業防衛の中枢。当時の勝俣恒久会長は企画部出身。その直系で社長候補の村松衛氏が執行役企画部長(現企画・広報担当常務執行役)を務めていた。技術屋の担当部長は、司令塔が命ずるままに動く「コマ」にすぎないことは、「上意下達」の東電では当たり前の話だ。

広報部は「何らかの意図を持って虚偽の報告をしたわけではない」と、誰も信用しないコメントを出したが、その責任者もまた村松常務である。玉井氏を「軽率なうっかり者」に仕立て上げ、幕引きを図る目論見が丸見えだ。結局、辻元氏が玉井氏の国会招致を求め、理事会で協議することに。

この問題の告発者である伊東良徳弁護士(元国会事故調協力調査員)は「東電は確信犯的なウソつき」と断じ、「机上のつじつま合わせで考えて、無責任で不自然なストーリーを社長に吹き込んだ連中の愚かさを見るにつけ、そしてこんな不自然なストーリーを聞かされて、そのまま国会で答弁する社長の理解能力と神経を見るにつけ、東電は上から下まで劣化している」と慨嘆(がいたん)する。「部下は捨て駒」の司令塔こそ、国会に呼ぶべきだ。

   

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