2013年10月号 連載 [いまここにある毒]
「このアニメ、ぜったい泣けますよ」と知人に推奨されたのが、全11話の『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』。思わせぶりの長い題だが、その悲しみはリアルすぎた。いまは亡き少女の幽霊と仲良し5人の屈託。秩父の武甲山の麓の変哲もない日常が、なぜこれほど哀切なのか。夕空に花火を打ち上げて、少女を「成仏」させようとするストーリーは、単なる郷愁ではない。「死」の寓意なのだ。愛らしい「めんま」の幽霊は、実は3・11のトラウマを片付けられないこの国そのものではないか。死者の不在を癒やせるのは歳月だけというありきたりの諦念ですら、300トンの汚染水漏れの悪夢でみごとに裏切られた。もどかしいほどの主人公の逡巡は、メルトダウンから2年半経っても立ち直れない東電と原子力行政の「レベル3」を象徴する。ずらりと並んだ福島第一のタンク群が墓標に見えた。政権交代から9カ月、 ………
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