朝日新聞が読者囲い込み!「デジタル印刷機」導入へ

2014年2月号 BUSINESS [ビジネス・インサイド]

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朝日新聞の木村伊量社長は1月6日の社内向け新年のあいさつで、今年度にデジタル印刷機を東京本社に導入する方針を明らかにした。全国紙としては初の試みで、新聞業界にかなりのインパクトを与えそうだ。

デジタル印刷機はデジタルイメージを直接さまざまなものに印刷する機器。イラストや写真などのデジタルデータをそのまま使うため「印刷版」をいちいち作る必要がなく、多品種の印刷を注文を受けてすぐにでき、オンデマンド印刷も可能という利点がある。ただ、大量のものを速く印刷することはできないため、部数の多い新聞紙の印刷には向かない。

新聞社が従来新聞紙を刷るのに使ってきた輪転機は、オフセット印刷機の一種で、少品種のものを大量に速く印刷するのに適しているが、大型のものだと土地や建物を含めれば100億円単位で費用がかかるのが欠点とされてきた。これに比べ、デジタル印刷機は3億~5億円程度で購入でき、人件費も抑えられ、多品種少量印刷に向くなど小回りが利く。

新聞業界では静岡新聞が傘下の邦字紙・ハワイ報知新聞を印刷するために、導入を決めている。一般的には五輪用の別刷り特集やチラシ、新聞折り込み用のエリア広告・特集広告のほか、ポスター、フリーペーパーなどに幅広く活用可能と言われている。

問題は朝日新聞のような大新聞がこれをどのような事業に使うかだ。 木村社長は①技術的な課題を検証する②多品種小ロット印刷に適した商品の受注機会を探る―と説明している。各地域ごとや分野ごとに多くの種類の「新聞」を作ることが可能というデジタル印刷機の特質を生かし、将来的には本紙と電子版にデジタル印刷版を組み合わせる形で、読者の「囲い込み」を狙っているのではないかとの見方も業界内では浮上している。

   

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