2014年11月号
連載 [いまここにある毒]
by A(絵:山田神)
東奔西走の安倍晋三首相に劣らず、77歳の森喜朗元首相も大忙し。9月10日にモスクワでプーチン大統領と会談して日ロをつなぎとめたと思ったら、19日には韓国で朴槿恵大統領と会って関係修復へ安倍親書を手渡している。
ところが10月2日、怒りを爆発させた。自民党行革推進本部(河野太郎本部長)が、新国立競技場をムダな事業の対象とし、運営母体の独立行政法人から事情聴取したからだ。安倍外交に貢献しているのに……とむくれている。
でも、本誌読者はお分かりだろう。前号、前々号の連続スクープが命中、解体工事が内閣府に入札やり直しを命じられ、たまらず「なぜ目の敵にする。どんどん遅れて間に合わなくなる。議員を辞めるんじゃなかった」と吠えたのだ。
最後の言葉は聞き捨てならない。では、東京五輪組織委員会の会長に就けば、政治家時代と同じく何でもありと考えていたのか。老いてますます強欲な老人力――と呆れるほかない。
8年ぶりに来日した歌手マライア・キャリーを見た。90年代のシンデレラも今や、双子の子を持つ堂々たる恰幅の44歳。自慢の5オクターブもさすがにファルセットがかすれる。でも、フィナーレの「ヒーロー」で片鱗が見えた。
自分をみつめて強くなれば/最後に見える/あなたの内なるヒーローが。
喜寿翁は「内なるヒール(悪役)」か。