2015年4月号 連載
東日本大震災から5年目を迎えました。私は南相馬市で医療支援をしてきましたが、いまを以てしても 「風評被害」と「風化」との狭間で悩み続けています。
県外から「福島を応援したい」、「産業をどうにかしたい」と相談されると、それ自体はありがたいのですが、中には「子供を今からでも避難させるべき」、「政府は稲作を止めさせるべき」、「メディアは隠蔽をするな」など、自己主張を肯定してもらいたいだけの人もいます。
また、弱者を守りたい気持ちゆえに生ずる「善意に基づく迷惑」を経験します。チェルノブイリと同じ未来を待つ福島は苦しんでいる、と福島を脱原発運動の象徴的聖地にしようとする。その一方で、残念ながら本当の良識人が、気遣うあまりに真実を語らなくなる。結果、風化が進む。県民の労力が、主張の強い人や「ありがた迷惑」の対応に費やされるとしたら、もったいないことです。解ろうとすることです。私が住み続けている訳は、この地がどう再生していくかを見届けたいからです。
南相馬市立総合病院医師 小鷹昌明