編集後記

2015年8月号 連載
by 宮

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福島第一原発の小野明所長(撮影/本誌 宮嶋巌)

3号機のガレキを撤去する無人クレーン(2013年9月)

イチエフは今、「Xデー」に武者震い。水素爆発で大破した3号機の最上階、むき出しになった燃料プールから、巨大なガレキを吊り上げる「真夏のイベント」の幕が開く――。廃炉を進めるには、まず原子炉建屋から使用済み燃料を運び出さねばならないが、屋根が跡形もなく吹き飛んだ3号機の燃料プールには夥しい量のガレキが散らばり、それを撤去しなければ燃料を取り出せない。

工事を担当する鹿島建設の所長は「現地で3号機を見た時は愕然としました。周りにガレキが散乱して、建屋の上には柱がぶら下がっている。発災直後は『5分限り』の現場もありました」と回想する。今も3号機の線量はすこぶる高く、有人施工は不可能だ。

鹿島は作業エリア周辺に無線LANをメッシュ状に張り巡らせ、500m離れた遠隔操作室(免震重要棟)との間を光ファイバーで結び、超大型クレーンを含む無人重機10台を操るシステムを作り上げた。この2年余りに無人重機で撤去したガレキは400個にのぼる。残るはプールの底に横たわる長大な燃料交換機(FHM)だ。昨夏、クレーンが0・5tのガレキを燃料集合体の上に落とし、肝を冷やしたが、FHMの重量は35t。落下はカタストロフだ。 

「専用治具(じぐ)を用いて安定性を保ちながら吊り上げ、燃料の共吊りがないかを確認する」と言うが、何が起こるかわからない。3号機プールには弱点があり、万一、G1ゲート(水門)の留め金が外れたら水が抜け落ちる。FHMとの接触事故は致命的だ。いくら入念な準備とモップアップ試験を繰り返しても、重いものを持ち上げる臨場感、抵抗感は遠隔操作ではわからない。「うまくいかない場合は元の位置に戻して、何度でも挑戦します」と、現地クルーは言う。この峠を越えなければ廃炉計画が頓挫する。クリティカルなXデーは、7月下旬にやって来る。

   

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