山東昭子が「抗認知症薬適量処方」の訴え

2016年1月号 LIFE

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「抵抗を受けるかもしれないが声を上げていかねば何も変わらない。母が亡くなった日に設立総会に出席したのは、この会が極めて重要だからです」

そう語るのは女性初の自民党の派閥領袖(山東派)である山東昭子元参院副議長(73)だ。

山東氏の母、初さんは2015年11月22日に危篤に陥り、翌日、97歳で亡くなった。

初さんが亡くなった日に、偶然、山東氏が名誉会長を務める一般社団法人「抗認知症薬の適量処方を実現する会」の設立総会が予定されていた。悲嘆を堪(こら)えて総会に出席した山東氏は、挨拶でこう語った。「私の母も以前、認知症治療薬の副作用で苦しんでいたことがあります。適切な薬の使い方が行われるように努力していきたい」

「実現する会」は、毎年1200人の認知症の初診患者を診察している河野和彦・名古屋フォレストクリニック院長と、在宅医療の第一人者の長尾和宏・長尾クリニック院長らが中心になって設立。アリセプトなどの抗認知症薬の増量規定の撤廃と、医師による適量処方の実現を目指している。

山東氏は66年間、初さんと一緒に暮らした。初さんが80代後半の頃、医師から認知症の一つのアルツハイマー症と診断され、アリセプトの服用を始めたところ、初さんは「興奮して怒りっぽくなった」。

政治家として多忙な日々を送る山東氏が、付きっきりで在宅介護をするのは難しく、90歳の時に初さんは施設に入った。

施設でも怒りっぽさは変わらなかったが、山東氏がアリセプトの服用を止めさせたところ、症状が改善して「以前の穏やかな母に戻った」。

「実現する会」代表理事の長尾医師によると、アリセプトなどの抗認知症薬には興奮作用があり、薬を増量すると、怒り、暴行、歩行障害、徘徊などの副作用が出ることが珍しくないという。

「ところがアリセプトには3㎎から始めて1、2週間後に5㎎に増量し、さらに病状に合わせて10㎎に増量する規定があり、これを守らないと医療機関にペナルティーが科されて薬代を自己負担させられることもある。これでは患者の体調や体質に合わせて、医師が自分の裁量で薬の量を減らして処方することが現実問題として難しい。結果的に抗認知症薬の過剰投与が常態化し、薬の副作用が原因の暴力などにより家庭崩壊に追い込まれる悲劇が相次いでいます。こうした悲劇をなくすためにも、増量規定の撤廃と適量処方の実現が急務です」(長尾医師)

総会には厚生労働省の三浦公嗣老健局長も出席して注目を集めた。三浦氏は「抗認知症薬を使う場合は高齢者の体調などを考慮して処方することが必要」と発言したが、増量規定撤廃には言及しなかった。

抗認知症薬は製薬会社のドル箱。増量規定撤廃には製薬会社や医学会などの強い抵抗が予想されるが、山東氏はこう話す。

「三浦局長が出席したのは画期的なことです。一般の人は医師から処方された薬を疑問を持たずに飲みます。それだけに医師は、その薬が本当に患者のためになっているのかを患者と家族の身になってよく考えて処方してほしい。政治家として会の活動をお手伝いしたい」

増量規定が撤廃されれば認知症医療は根本的に変わるだろう。今後の活動が注目される。

   

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