随分と若いころからFACTAのような調査報道主体の雑誌を読んできた。1980年代に英国にいたころにはFTやTimesやEconomistなどの長い調査報道の記事を、週末に自宅で読むのが好きであった。特に日曜版には驚くような調査報道記事が掲載されることが多かった。

日本の大新聞では、読者のためにというよりも広告主や時の政権に遠慮して個別企業の内幕物や政治家のスキャンダルなどの暴露記事が少ない。FACTAは別で、毎号見出しだけ見ても、読んでおきたい記事がいくつもある。現場で取材する記者が他所で書けない内容を書いているとしか思えない斬新なものも多い。

大新聞がいろいろな関係者に遠慮して本音を書けない内容を大胆に切り込んでタブー視しない思い切りの良さにはいつも感心する。世の常として「くさいものにはフタ」的な事なかれ主義が横行する日本では、常にタブーに正面から挑む役割を果たすメディアが必要である。本誌が社会の常勤監査役的な役割をずっと果たしてくれることを期待したい。

築地本願寺　宗務長　安永雄彦