小林 節 氏
「国民怒りの声」代表
2016年7月号
LIFE [インタビュー]
聞き手/本誌編集人 宮嶋巌
1949年東京生まれ(67歳)。慶応義塾大学名誉教授、憲法学者、弁護士。元ハーバード大学研究員。政治団体「国民怒りの声」を設立。公募を含む10人の候補者を擁立し、参議院比例代表選挙を戦う。
――6月10日に参院選比例代表候補8人を発表しました。
小林 5月9日の旗揚げ以来、公募候補に70名以上の応募があり、男女半々、紹介・公募半々のルールで選びました。俳優の宝田明さんと元参院議員の円より子さんは有名人ですが、後は普通の人々の代表として、共に戦ってくれる勇気のある人たちで、全員選挙のど素人です。
――選挙はお金がかかります。
小林 クラウドファンディングは、開始から50時間で目標額の600万円を突破し、これから第2弾を始めます。とはいえ、必要な供託金6千万円には届かないので、私の普通預金から貸し付けることにしました。地盤、看板、鞄(かばん)(お金)が揃った世襲候補、巨大労組や宗教団体が推す候補に比べ、普通の人が全国比例に出るハードルは高すぎる。「選挙に出るな」といわれているようなものだと痛感しました。
――何を一番に訴えますか。
小林 参院選の争点は、安倍政権による3分の2の議席獲得を阻止して立憲主義を回復することです。安倍政権は、世界のどこででも戦争のできる法律を成立させてしまった。政府自身が公然と憲法を破ったのであり、国民主権国家における主客転倒は許されない。安倍内閣には一日も早く退場してもらわなければなりません。そのために私は、現行選挙制度下では、野党は自公に学んで、選挙協力をしなければならないと、強く主張してきました。結果、参院1人区で野党統一候補が実現した。この点は大いに自負しています。
他方、私は、比例区に野党は統一名簿で参加せよと主張してきました。これが実現すれば、野党各党がバラバラに戦って無駄にしてきた莫大な「死に票」が合算されて議席が増える上に、野党共闘の「本気度」を示すことができます。しかし、現実には、野党統一名簿構想は頓挫してしまった。このままでは与党の勝利は目に見えています。
参院選比例区から宝田明氏ら8候補の出馬を発表する小林節代表(6月10日、撮影/本誌 宮嶋巌)
――怒りの声の参戦で「政権批判票」が割れませんか。
小林 なぜですか。私たちの主戦場は全国比例、1人区に乱入することはありません。選挙中は、民進党支持者には更に民進党を、共産党支持者には更に共産党を支持してくださいと訴えます。今の政党や政治を信頼できないと感じている有権者は、恐らく30%を超えています。安倍政権の暴走を止めたいけれども、かといって民主党政権の失政を赦すことができず、また、共産党に投票する気にもなれない、言葉を換えれば反安倍・嫌民進・共産未満の感情を抱く有権者が3千万もいるのです。その多くが無党派・棄権層と見られます。今の政党や政治に顔を背ける人々の代弁者になりたいと思って、私たちは「第三の旗」を立てたのです。その結果として、野党共闘のすそ野が、更に広がることを願っています。
――どんな戦いを挑みますか。
小林 公選法が認めるあらゆる手段を駆使して「自由な言論報道の回復」に始まる七つの基本政策を訴えていきます。お金も組織もありませんから、既成政党が奔走する「地上戦」は不可能ですが、既に100名以上のボランティアが集まっており、ユニークな戦いを挑みます。