2018年3月号
連載
by 知
ベアトリス・フィン核兵器廃絶国際キャンペーン〈ICAN〉事務局長
「国会に事実調査委員会を立ち上げて、日本政府がとっている政策や行動が、核兵器禁止条約違反に当たるかどうかを洗い出してください。もし違反がないなら、なぜ条約に入れないのか、入って良いではないかという議論になるかもしれません。既存の政策に変えなければいけないところがあるなら、どう変えるべきか、何が必要なのかの議論もしていただけます」
(核兵器廃絶国際キャンペーン〈ICAN〉のベアトリス・フィン事務局長、1月16日、日本記者クラブの会見)
ICANは、超大国が推し進めてきた核不拡散条約(NPT)の秩序や、核の傘による戦争抑止論に抗う者として頭角を現した。そして、世界の人々に、核兵器の問題は、超大国の一部の専門家や政治家に任せてよい問題ではなく、すべての人々が関わるべき問題であること、意見を述べる権利を持っていることを、気づかせた。
フィン氏の、大きく目を見開き、自信たっぷりに、よどみなくしゃべる姿は、意見の違う人にも、とりあえずのところまで、その言を聞いてみようと思わせる力があり、日本の政治家も党派を超えて、その声に耳を傾けた。
さて、先の大戦で核攻撃を加えてきた米国の核の傘に守られている形の日本の安全保障体制だが、2度の闘争と2015年の安保法制改正の際にみられた議論の高まりは、今では政権により、福島の原子力事故災害をめぐる議論とともに、完全に鎮められている。
ここはフィン氏に気づきを与えられたということで、政治対立は抜きで、いまある日本の安保政策・行動は、今般打ち立てられた核兵器禁止条約に反するか否かを、国会で調査し、それをもとに国民が議論を始めるときだ。国家の安全保障は、核兵器の問題と切り離せない、すべての国民にかかわる問題だからだ。