2018年4月号 DEEP
野球ファンにとって、待ちに待った球春がやって来た。日本のプロ野球は3月30日、セ・パ両リーグともに開幕を迎える。今年は日本ハムのドラフト1位ルーキー清宮幸太郎選手のほか、中日に移籍した松坂大輔投手など話題に事欠かない。野球関係者の多くが期待に胸膨らませる姿とは対照的に、ここ数年、業績低迷に苦しむ企業がある。
その会社の名は、ベースボール・マガジン社(東京都中央区、以下ベーマガ)。「週刊ベースボール」「週刊プロレス」という2つの看板雑誌を中心に、野球、プロレス・格闘技、サッカー、テニス、ラグビー、相撲、柔道など、様々なジャンルのスポーツ雑誌を発行する老舗出版社だ。創業は戦後まもない1946年と古く、業歴は70年を超える。
戦後の高度成長期における日本人の最大の娯楽だった、プロ野球とプロレスの人気とともに業容を拡大。この間、子会社の経営不振から資金繰りに行き詰まり、67年には会社更生法を申し立てた。約10年に及ぶ更生計画を経て再建を果たし、2004年12月期には年売上高約120億円を計上。社名にもあるように、野球雑誌を中心に高い知名度を維持してきた。
そんな老舗出版社であるベーマガはここ数年、審査・与信管理関係者の注目を集める動きが続いた。まずは業績の低迷だ。もちろんこの傾向はベーマガに限った話ではないが、4年前にはついに売上高が大台の100億円を割り込み、その後も連続減収から抜け出せていない。
15年後半には、メーンバンクを東京都民銀行から東京シティ信金に変更した。もともとベーマガの主力行はみずほ銀行で、12年中に都民銀行に替えたばかり。そもそも企業はあまりメーンバンクを変更しないものだが、「一度ならず二度も替えたうえ、メガバンクから地銀、信金と明らかにその『格』も下がっている。会社側は自社に有利な資金調達の提案があったためと説明しているようだが、メガと地銀が引いた背景を邪推したくもなる」(出版業界関係者)。
この間、出版取次準大手の栗田出版販売(15年6月民事再生)、同中堅の太洋社(16年3月破産)が相次いで破綻し、両社に対して焦げ付きが発生。16年には本社ビル不動産の売却、関係会社の吸収合併、総務担当役員の辞任のほか、3代目社長の池田哲雄氏から日本ハム斎藤佑樹投手へのポルシェ提供報道(「週刊文春」)などもあった。
なかでも関係者を驚かせたのが、南魚沼産コシヒカリ「ベーマガ米」の販売だ。多角化の一環で16年夏から開始して現在も続けているが、「まさか出版社が米を売ることになるなんて。南魚沼はベーマガ創業者(故・池田恒雄氏)の出身地で、支社がある場所とはいえ、初めて聞いたときは耳を疑った」(大手紙販売代理店)という。
前期(17年12月期)の売上高も当初計画を大きく落ち込んだと見られ、主力の雑誌事業の低迷に歯止めがかかっていない。今年2月、発行元の出版社の倒産で昨年末に休刊が決定した「剣道日本」の後継誌の別冊発行をベーマガは手がけた。結果的に同誌を救済する形となったが、このまま前年割れの売上推移が続けば「今度はベーマガが救済される立場になることも十分あり得る」(前出の出版業界関係者)。2年後に迫る東京五輪が追い風となるかどうか。