病める世相の心療内科⑯「情報過多」時代が作る不安神経症

2018年5月号 LIFE

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まだ公立病院勤めの頃の話である。ある日、真面目なタンクローリーの運転手が「一睡も眠れず、車に乗ると激しい動悸が起こる」と受診してきた。その2年前、彼が運転していたタンクローリーに、診察を終えて帰宅途上の患者が、自殺を図って道路脇から飛び込んだ。病院前の車道での出来事だった。幸い少し肩が触れた程度で、転倒による打撲で済んだが、次の日、運転手を雇っている小さな運輸会社の社長がやってきて「医療費を払うから、事故扱いにしないよう、家族に話をしてもらえないか」と求めてきた。運転手に落ち度がなかったとしても、人身事故となれば免停は免れない。運転できない者に給与は払えないが、もともと真面目な奴で、子供の学費やローンも抱えており、首を切るのは忍びない、というのであった。飛び込みは若い医師の診察直後の出来事で、病院側にも責任が無いとは言えず、私から家族に ………

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